お礼を言われる

朝、東京駅で東海道線の電車を下車してホームを歩いていたら、30代くらいと思われる男性が座席で眠り込んでいるのを見つけた。ホームには「回送電車なので車庫に入ります」というアナウンスが流れている。ひょいと電車に乗り込み、「東京駅ですよ」と声をかけながらつついて起こしてあげた。これまで多分20人以上の人を起こしたことがあって、それ自体は珍しくないのだが、今回は起こしてあげた男性がこちらを見て「ありがとうございました」と言ったので大変驚いた。

何故驚いたかというと過去の経験上、電車の中で寝ていて起こされた場合、男性女性を問わず、いきなり立ち上がりこちらを見ることもなく電車から飛び出して行くというのがほとんどで、今回のようにちゃんとこちらを見てお礼の挨拶までした人は初めてだ。

びっくりしたなぁと思いながらさらにホームを進んでいくとまた寝ている会社員らしき男性がいた。今日は大漁だ（全然うれしくはないが）。本当であれば起こしてあげたいところだが、そろそろ回送電車が発車しそうな雰囲気だったので、起こしてあげるつもりが自分も一緒に車庫に連れて行かれると困るからそのまま通り過ぎた。

電車で寝ている人を起こしてあげるにも色々とタイミングがある。例えば、寝ているのが若い素敵な女性だと逆に声をかけにくかったりするし、起こしてあげたいなと思っても付近に乗客がいるとなんとなく良い格好をしていると思われそうで声をかけるのを見送ったりすることがある。そういうとき僕は人生における不可思議な偶然について考えてしまう。