イベントを終えて

TOMOYO Linux Nightが終わった。参加者は、イベント本体が約60名、その後の懇親会は35名(こちらは自分で幹事をやったのでわかる)で、盛会と言って良いだろう。もっとも今回YLUGカーネル読書会としての開催だったから、それに負うところは多い。

約10分の質疑の時間とその後の懇親会では、TOMOYO Linux自体というよりは、コミュニティとの関わりやメインライン展開に向けた姿勢、企業とオープンソースという部分について、活発な議論があった。議論の口火を切ったのはまさに開発者である熊猫先生だった。「パッチを発表するのにいちいち決裁を起こさなければならない(実際には決裁と事務処理は僕が行っているのだが)。subversionなのにコミュニティの力を得られない」と日頃からの不満が吐露され、そこからひとつの流れができた。「取り組みが中途半端だ」「命をかけてやっているように思えない」「kernel mlにアナウンスも出してないとは信じられない」「コミュニティに顔を売っていない」。

議論の大勢は、いつしか会社とプロジェクトの代表者である自分に対する非難の傾向を帯びてきた。懇親会の開始の時刻を過ぎてしまい、お店に迷惑をかけたくなかったので一度議論を中断させてもらった。自分は少なからず混乱していたが、懇親会に参加しない人たちが解散する前にこれだけは言っておきたいと思い、「必ずしも会社員としての立場からではないが」と前置きしてから、こう話した。「確かにメインライン化やコミュニティに対する姿勢が積極的ではないかもしれない(多分それは僕の責任だ)が、このプロジェクトは、会社が今日までその活動を認め、投資してくれたから存在している。そのことは理解して欲しい。このプロジェクトは、まだ会社に対して事業的な貢献はできていない(僕はそのことを心苦しく思っている)。どのような形かわからないが、コミュニティに対して一方的にリソースを提供するだけでなく、会社としてもその活動を継続できるような理由、状況は必要だ」

懇親会の予約と手配は自分で行ったので、そのまま参加者の人たちを会場に誘導した。吉岡さんに乾杯の挨拶をお願いし、乾杯だけ立ち会ってからお店の人と人数を調整し、会場の片づけを手配した。会場の閉鎖と最後の機材の格納を確認してから店に戻り、入り口の近くの席でメンバーの労をねぎらっていると参加者の方の一人が近づいてきて、「何故参加者の席を回って挨拶しない?そもそもその姿勢が間違っている」と言われた。

吉岡さんのブログでは「たじたじ」と書かれたけれど、実際には「たじたじ」というよりは、ずっと不思議な気持ちで参加者の意見を聞いていた。発言した人の中には、TOMOYO Linuxが何かもよくわからない人もいたようだ。別にわからなければ意見は言うべきではないとは言わないが、実際にやってきたこと、考えたことを聞こうとしないで、プロジェクトの「姿勢」を決めつけられたとしたらそれは残念だ。木曜日の夜にイベントが終わってからも金曜日、土曜日とずっとそこであった発言の内容を考えていた。誰が、何が悪いのか。まだ答えは出ていないけれど、メインラインに入れる活動は行おうと思う。でも本当はそれは既に12/8のJamboree12以降始まっているし、誰かに言われたからやっているわけではない。

カーネルのプログラムは勿論難易度が高いだろうし、コミュニティとの関わりも難しいものだろうと思う。だけれど、うちのような会社でTOMOYO Linuxのようなプロジェクトを推進するのは多分それ以上に難しい。そしてそれが僕のこのプロジェクトにおける役割だ。