出張の準備

資料を作るので一杯になり、出張については何も用意をしていなかった。本当は機内でカラマーゾフの兄弟を読もうと思っていたのだけれど、それすらも買えなかった。とりあえずスーツケースを取り出して、日数分の着替えを押し込めた。あと、何を持っていけば良いのだろう?と考えて、改めて本当に何も準備していないことを思い知らされた。成田に行って飛行機には乗れると思うけれど、そこから先はわからない。

考えてみると最後に海外に行ったのはもう10年以上も前のことだ。そのころと今はまるで何もかもが変わってしまっている。考えていても仕方ないので、近所の薬局に行って入浴剤とデンタルフロスと歯ブラシとインスタントのみそ汁を買ってきた。何が必要かと考えて、HP-200LXとFinePixと折りたたみの傘と、日本茶ティーバックを鞄に入れて、日本からの電話のかけ方と日本への電話のかけ方を調べた。ついでに僕が乗る全日空は第1ターミナルであることもわかった。日本とカリフォルニアの時差を調べて、引き出しからもうひとつの腕時計を出して現地の時刻にあわせた。ついでに2つの時計を電波時計で時刻を合わせた。

心配しているかなと思い、実家に電話をした。母に「発表は声を大きく、ゆっくり落ち着いて」と言われて、そういえば発表のことを何も考えていなかったなあと思ったし、まさか予想していなかったアドバイスで一瞬思考が停止した。何歳になっても、母にとって僕は息子だということを久しぶりに思い出した。僕は、「ありがとう、そうするよ」と答えた。