19年ぶりに

4月に見慣れぬアドレスから、「ホームページ拝見しました。お久しぶりです。」というメールをもらった。昔NTTの横須賀通研で働いていたときのMさんということはすぐわかった。何かのきっかけで僕が仕事で行った論文発表や講演についてまとめたページを見つけて、そこからこの日記にたどり着いたらしい。それから何度かメールを交換して、僕は知らないところでずっとMさんを傷つけ、苦しめていたことを知った。そのことについて僕はすまなく思うと伝え、自分が原因を作ったことについて謝り、そうしていくつかの些細な誤解については事実を説明した。それから連絡はしばらく途絶えていたが、6月になって、「会って話したい」というメールをもらい、会う約束をした。

午後8時に横浜駅ルミネ5Fの有隣堂の建築のコーナーで待ち合わせ、5分前に着いた僕はMさんがいないことを確かめて、ダンス・ダンス・ダンスの下巻を買って、コルビュジエの本を眺めていたら彼女が来た。「19年ぶりで、お互い相手がわからないといけないから」と目印をメールしてくれていたけれど、僕は勿論そんなものがなくても見つけることができた。

「お久しぶりです」
「久しぶり」
「19年ぶりですね。私、ずいぶん変わったでしょ?」
「そうかな?すぐにわかったよ」
「それに・・・、変わったとしてもお互い様だよね」

19年ぶりの会話はそんな言葉から始まった。そう、あれから19年も経ったんだ。僕は19年の間に変わったものと、変わってないもののことを考えた。