パスワード

1998年にそれまで所属していた研究開発部門から事業部門に異動したのをきっかけにOutlookを使うようになった。以来、現在に至るまで7年間以上のメールを全てOutlookのデータファイルに保存してある。何の時に使うかというと、過去話題になった件についてメールを書くときに引用する。無論頻度は高くないが、数ヶ月に一度くらいの割合で半年とか1年前のメールを引用することがある。

ThinkPadのディスクがおかしくなった際にこのデータファイルをデスクトップに待避することができた。約1GBのファイルだ。これを開こうとしたら暗号化のパスワードを求められた。よく使うパスワードを2,3入れてみたが間違っている。タイプミスかと思いゆっくり入力しても駄目だ。CAPS LOCKした状態でパスワードをかけたのかなと思いロックしてみても駄目だ。次には、生年月日、社員番号等、思いつく限りの文字列を入れてみたがやはり違うと言われる。次にわざと粗雑にパスワードを入れて、キー入力の間違いを再現してみようと思ったが駄目だった。

Outlookのデータファイルは作成時と作成後パスワードを設定できる。設定する際には確認を求められて合致しないと登録されないから、僕は少なくとも二度そのパスワードを入力しているはずだ。このパスワードはデータファイルを作成後最初に参照したときに入力を求められ、その内容をパスワードリストに登録しているからそれ以降は入力しないで参照できている。ディスクが壊れなかったらそのままパスワードがわからないでもデータを参照できたのが、ディスクが壊れたからアクセスできなくなってしまった。

もしかしたらデスクトップに入っていたOutlookのバージョンとThinkPadOutlookのバージョンが違うせいかな?と思い、違うThinkPadにデータを転送して、壊れたディスクに入っていたのと同じバージョンのOutlookで開いてみたけれどやっぱりパスワードが違って開けない。なかばあきらめかけたときに最後の手段を思いついた。壊れたディスクをThinkPadに戻し起動する。一度削除したOutlookを再インストールし、待避したデータを再びThinkPadに戻すと、保存されたパスワードが参照されてパスワードがわからなくてもデータが開けるかもしれない(要するにディスク障害になる前の状態だ)。

結論としては、この試みは成功した。作業の間ディスクは異音を発しながらもなんとか持ちこたえてくれた。その状態でデータファイルのプロパティを開きパスワードを変更しようとしたが、変更には「元のパスワード」を求められたので、仕方なく新しいデータファイルを作りそこにメッセージをコピーした。コピーが終了した時点で、データファイルを切り離し、Outlookを終了し(そうしないとデータファイルを開けない)、フォルダを共有してデスクトップにコピーした。新しく作成したデータファイルはパスワードをかけないことにした。

こうして僕は再び昔のメールのデータを開けるようになった。そして、同じメッセージが入っているはずのパスワードがわからないデータファイルが残った。もうパスワードがわからないほうのファイルは消しても良いのだけれど、僕はそこに封印されたパスワードを確認してみたい気がしてそのファイルを消せないでいる。