マーフィーの法則

家に帰ると大学の名簿が届いていた。自分の学科と卒業期のページを開き、ざっと同期の連中の名前と所属を眺め、新たに亡くなっている人が増えていないことを確認する。同期のS君が亡くなったのはもう10年近く前になるだろうか。弔問には行かなかったし、詳しい死因も記憶していないけれど、その早すぎる死を聞いた時の驚きは今も鮮やかに残っている。

名簿は毎年送られてくるけれど確認するのは自分の所属くらいだ。以前は自宅住所と連絡先も掲載されていたが数年前から勤務先のみになった内容を確認すると一、二世代古くなっている。名簿に綴じこまれている葉書を切り取り現在の所属を書いて投函する。この所属の変更は完全に年中行事になっている。

多分名簿の情報をアップデートしても誰も参照する人はいないと思う(もしかしたら名簿屋に売られて、何かの業者が参照するかもしれないけれど)。そもそも僕の連絡先を探そうと思う人自体ほとんどいないだろうし、いたとしてもネットで検索したほうがよほど早くて確実だ。それなのに毎年名簿の更新を連絡し続けているのは、同窓会の名簿が自分の所属の変遷の記録になっているからだ。かかりつけの病院のカードが増えても何も良いことがないように、自分の所属の内容が正しく名簿に記録されていたとしても何も良いことがない。それを知る人もなければ、興味を持つ人もいないに違いない。だが、少なくともそれは自分のちょっとした努力により保たれるものであり、またそれを求める人がいる以上協力したい、そう思っている。