FOMA STICK, SO902iインプレッション

ここではSO902iを利用しての印象についてレポートする。初版のレポートは2006.6.7に書かれたが、内容は日々更新していくので、是非ブックマークして読んでいただきたい。なお、私はSONYファンではあるがソニー関係者ではない。本文中、[1]のような表記は本文末尾の「参考情報」の番号に対応している。

  • 外観

僕が購入したのは「ダークブルー x ブラウン(Darkblue x Brown)」のモデルだ。屋外や明るいところで見るとパープルがかかった濃いブルーだとわかるが、室内で見ると限りなくブラックに近い。本体は非常にコンパクトだが、手に持つとずっしりとした手応えがある。心地良い重量、質感で、重いとは思わない。全体の造りは大変良い。SO902iのロゴも高品位だ。D901iも非常に手間とお金のかかっていることを感じさせたが、残念ながらSO902iのように工芸品的な魅力は感じられなかった。

SO902iは「FOMA STICK」というコピーがつけられている。実際にSO902iを手に取り、持ち歩くようになると、これは確かに"STICK"だという気がする。名コピーだ。今までのDoCoMoのラインアップにない独自のイメージがある。本体は軽くはないが重いとも思わない。手頃な手応えがある。また、僕はいつもポケットにいれているが、取り出してみて上下が逆さのときにちょうどうまく手のひらの中で回転する。短い「スティック」だ。

  • レスポンス

OSがD901iと同じSymbianとなれば、携帯マニアであればまずは「もっさり感」が気になるところだ。[2]では「動作の機敏さのほうは、実のところあまり期待しないほうがいい」とあるが、使ってみた感じではそれほど悪くないと思う([2]の内容は試作機での印象のようだが)。全体的なレスポンスはD901iより一回り以上確実に早いが(D901iは操作してから反応を「待つ」という感じだった。それに耐えられなければD901iは使えない。またたまに入力をこぼした。なので僕は一生Symbianの携帯は使わないつもりだった)、個人的には「快適」というまではいかないが、その一歩手前という感じだ。ほぼ全ての操作についてD901iより確実に早いのだが、何故かiモードの通信についてのみは体感的にD901iより遅い気がする。

  • 入力

日本語入力はPOBoxだが、候補が表示されている状態で左右のカーソルキーは変換対象の元の文字列の文字移動に割り当てられていて、候補の選択(移動)は上下キーで行う。候補の移動は単語毎であって、SO505iS, SO506iCではジョグダイヤルがあったのであまり気にならなかったが、「上の行」「下の行」へ移動するのはやや不便だ(行の上下移動は、キーの長押しでも行える)。

カーソルキーに対する機能の割り当ては一概にどれが良いということは言えないと思うが、D901iでは上下左右のカーソルキーはそのまま予測入力の候補の単語の選択に使えるようになっていて直感的だった。内蔵されている辞書も圧倒的にD901iのほうが良い(最後まで好きになれなかったD901iだが、こと日本語入力に関しては自分が過去使った全ての携帯の中でベストだった)。データは確認していないがSO902iでは明らかに語数が少ない、少なすぎる。また、「いち」を変換して1を出そうとしても最初の候補は①になるのも不可解だ。とりあえずSO@Planetから辞書ファイルをダウンロードしてみたが、全ての辞書を落としてみたら今度はキー入力の都度膨大な候補が表示されるようになりさらに操作性は低下した。どうやら自分で辞書登録するしかなさそうだ。用途やジャンル毎の辞書バリエーションというよりは基本辞書をもっとちゃんと作り込んで欲しかった。

文字入力に関してはこのようにD901iに完敗に近いのだが、良いと思ったのは文字種の切り替えだ。キーを押下する毎にかな、半角英数等種類が変わる。D901iでは文字種変更キーを押して、変更する内容をカーソルを移動させて選択しなければならなかったから大変面倒だった。

  • 液晶

液晶画面はクリアだが本体がコンパクトなので異様に画面表示密度が高い。つまり字が小さくて読みにくい。文字を最小にすると、冗談ではないかと思うくらい小さくなる。オプションで拡大ルーペを売ってみてはどうだろうか。ここまでコンパクトにしなくても良かったのだが・・・。また液晶の輝度については屋外の明るいところではやや辛い。D901iは最大輝度にすると屋外でも問題なかった。色彩もD901iの液晶のほうが優れていた気がする。

  • 操作性

キーの操作性だが、[1]では操作性改善のためキートップを波型(ウェーブデザインキー)にしたとあるが実際に使用したところではあまりその効果が感じられない。購入後DoCoMoショップでPremini Ⅱをさわって比較してみたが、Preminiキートップの間にスペースが置かれていて、そちらのほうが使いやすいと思った。こだわって白色LEDにしたというキーの照明も視認性、操作性に貢献しているような実感はない。個人的な好みとしては、キーが半透過になっていて背面からオレンジ系で照らされるのが好きだ。Preminiから変更したユーザでは、Preminiのブルー表示がきれいだったという声が多い。確かにブルーも似合うだろうと思う。D901iのキー照明は背面からではなく、「点」光源で実にださかった。オフにしたかったが、そうするとキーの照明が何もなくなるのでいたしかたなく設定していた。

自分が購入したSO902iはダークブルーだが(やっぱりビジネスマンの携帯は黒だよね)、キートップの文字の印刷カラーが全て白色というのはいただけない。どうしてここまで白にこだわるのだろう。せめて、数値キーの上の列、あるいは電話機のマークのキーくらいはカラーにして欲しかった。また、本体がここまでコンパクトであれば無理かもしれないが、テンキー部分とそれ以外の間にわずかでもスペースを入れて欲しかった気がする。

  • 不在着信機能

不在着信のLED表示について色を選択できるのは素晴らしい(本来は当たり前の機能なのだが、D901iでは多色発光できるのに色を選択できないという不条理な設計だった)。ただボディ上部に設置されたインジケータは細くて小さいので目立たない。特にホルダーに載せて充電していると本体が反り返り、インジケータがやや隠れるような形になり目だたなくなるのは良くない。SO505iSではインジケータがアンテナとうまく融合してデザインされており、横型で視認性も良かった。D901iのインジケータは大きいのは良いがデリカシーに欠けデザインを度外視したもので、使っていて恥ずかしかった。

  • ホルダー

ホルダーについてはSO505iSでは質感が高くエレガントなデザインだったが、SO902iのものは不格好なシングルソファという感じでお世辞にもデザインは良くない。添付の画像は左からSO505iS, SO506iCSO902iを並べたものだが、ホールドした状態での床面から携帯下部までの高さはそれぞれ17mm, 20mm, 40mmとなる。SO902iは実にSO505iSの2倍で腰高だ。本体が縦長なのに腰高なのでホールドした姿はなんだかしまらない。ワゴン車かバスの運転席みたいだ。またホルダー自体もずいぶんと大きいことがわかる。
ホルダーに置いた状態では携帯ではかなり上を向いた形になる(仰角が大きい)ので、上部中央にある縦長の細くて小さなインジケータはさらに目立たなくなる。これは一種設計のミスだ(ホルダーに置いた状態では普通のユーザは携帯をあまり気にしないと言われればそれまでだが)。この画像ではわかりにくいが、SO505i, SO506iC, SO902iと並べてみると、SO505iSのホルダーがもっともコンパクトで携帯との一体感があり、デザインが良い。SO506iCのものは悪くはないが、携帯本体と同様に妙に丸みを持ったデザインになりシャープさがない。ちなみにD901iのホルダーは馬鹿みたいに造りがちゃちで貧相だった。あんなものを買わせるとは全くひどい。もし購入前にホルダーを見ていたら絶対他の機種にしたと思う。
ホルダーに置くとチャージが始まる。チャージのインジケータは数字の7のキーの左横にある。最初はおかしな場所にあると思ったが、マイクと左右対称の位置になっている(マイクは数字の9のキーの右横にある)。インジケータもマイクも目立たないが、なかなかおしゃれで、デザイナーの配慮が伺える。

  • メニュー画面、待ち受け画面

メニュー画面と操作手順は、コンパクトな本体なのに良く練られたものになっている。使い込むにつれて、操作が確実になじんできている。SO505iSのようなビジュアル的な美しさはないが、狭い画面を最大限に活用しており実用的でありながら洗練されている。これはメニューの背景でグラデーションをかけている[1]というようなこだわりと努力の積み重ねによるものだ。使う度にSONYを選んで良かった、そう思える内容であり、FOMA STICKにふさわしいUIと言える。
特筆したいのはマルチタスクの操作性だ。FOMAの端末の利点のひとつとして、複数のアプリケーション(電話、iモード等)を同時に起動し切り替えることができる。この機能はD901iにも実装されていたが、「マルチタスクボタン」による操作が極めて行いにくかった。ところがSO902iでは、驚くべき事に「マルチタスクボタンとマルチタスク専用メニュー」が存在しない[1]。常にMENUキーを押すことによりトップレベルの機能の選択ができるし、トップのアプリケーションの画面を透過にすることによりその前のアプリケーションの「存在」が見えるようになっている。まさにstate of the art、素晴らしいとしか言いようがない仕上がりだ。

  • 待ち受け設定

携帯電話を使っている時間のほとんどは待ち受け状態なので、待ち受け画面や設定の内容は携帯選びに重要だ。

SO505iSと言えば、省電力設計で通話中以外のときの液晶画面をオフにして、「うっすらと」時計のみを表示できる機能がある。その機能はSO506iCでも継承されているが、SO902iではその機能がないのは残念だ。

待ち受け画面のデザインについては、プレインストールのものは今ひとつだ。SONYの携帯では「背景画像なし」にしても単色の画面ではなくあらかじめ用意された「背景画像なし用の背景画像」が表示される(大変センスが良いと思う)、SO902iでもその機能は活きていたが、SO505iSのほうがエレガントだ。待ち受け画面にカレンダーと時計を表示する際、レイアウトはいくつかパターンが選べるが細かな位置調整はできない(SO505iSでは各レイアウト毎にデジタル時計の縦ポジションをドット単位で調整できる)。画面が小さいからかもしれないが残念だ。

  • 902

902シリーズを使ったのは今回初めてだったのだが、一週間お試し(無料)で流れるiテロップには驚いた。最大限にうざったい。即刻オフにした。もうひとつ。携帯を届けてくれたDoCoMoショップのお兄さんいわく、「902のシリーズは電池の消耗が激しいです。よく故障といわれることがありますが、そういうものだと思ってください。これまでのシリーズと同じと思っていたら駄目です」ということだ。

  • カメラ

メニューと操作性は大変良い。SO505iSのものよりも進化している。撮影モードでのモニターの追随性が良く、レリーズしてからのタイムラグも比較的短い。強いて言えば、撮影モードにはいるまでの待ち時間はもう少し短くできるとうれしいのだが。
[1]によると肌色と青色がよく出るようにチューニングされているという。SO505iSは100万画素だったが、青は深みのあるきれいな色が出ていたので期待できる。携帯電話のカメラという割り切りではなく、こうしたチューニングをしている点はとてもうれしい。

実際に写真を撮り始めた。設定としてはせっかくの300万画素なので、最大画素のFineで撮影している。撮影した画像はFlickrにアップしていくので実画像はそちらを参照のこと。http://www.flickr.com/photos/haradats/tags/so902i/

まだあまり撮影していないが、画像はそれほど良いような気がしない。上記に掲載した写真を見てもわかるが、露出は全体にアンダー気味の傾向があるような気がする。SO505iSD901iではこんなことはなかったのだが・・・。設定や調整というよりは故障に近い感じに思う。今後は平均測光かスポット測光で撮影してみることにする。各種機能の操作性は撮影時についても良いが、画像の回転について1方向だけだったり、高い画素数では回転自体できないのが(おそらくメモリーの関係だろう)残念だ。また、はりきって1GBのメモリースティックを購入したが、データの表示はかなり「もっさり」している。

  • バッテリーのもち

購入直後にしては、減り方が早い気がするが、902iシリーズ固有のものかもしれない。使い始めて約2ヶ月が経過したが、毎日確実に充電しないと使えなくなるようになった。またフル充電したはずが、突然電池マークが1個になったりすることが度々ある。バッテリー劣化なのだろうか?ちなみにバッテリーマークは3段階だが、1目盛りになると色が赤くなる。心憎い設定だ。

  • 総評

SO902iは、ソニエリソニー・エリクソン)としての「FOMAへのメジャーデビュー」と位置付けられている。SO902iに興味を持たれている方には是非[1]をお読みいただきたい。
コンパクトで質感の高いボディは持つことの喜びを感じさせる。ボディのコンパクト化、ジョグダイヤルがないことによる影響はあるが、使い勝手は非常に良く、よく練り込まれたものであることを感じさせ、携帯電話に求められる実用性を十二分にクリアしている。画面のデザイン、ユーザインタフェースは、洗練され、特にマルチタスク切り替えは秀逸だ。
トータルとして、「SONYらしさ」を感じさせる素晴らしい内容であり、使うほどに喜びを感じる。SONYファンであれば"must buy"だが、SONYファンならずとも携帯電話にこだわる方には是非お勧めしたい。SO902iを使うことは他のFOMAは使うこととは意味が違うのだ。

  • 参考情報
  1. SO902i開発者インタビュー FOMA STICK」に込められた思いとは
  2. 写真で解説する「SO902i」
  3. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0510/19/news037.html
  4. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/29/news045.html
  5. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/28/news099.html
  6. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/03/news003.html
  7. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/09/news005.html
  8. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0603/23/news007.html
  9. http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0604/11/news007.html
  10. http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/26160.html
  11. http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/showcase_top/28337.html
  12. http://review.japan.zdnet.com/keitai/docomo-so902i/
  13. http://d.hatena.ne.jp/keyword/SO902i