さよなら茅場町

来週から勤務先が豊洲になる。今日が荷物の搬出で、茅場町勤務最後の日だ。茅場町にくる前の職場は築地で、3年前の3月から約3年半ここで仕事をしたことになる。晴れた日はいつも東京駅から歩いて、帰りは僕が帰る時間にはバスが終わっているのでやっぱり歩いて東京駅に向かった。

最後の昼食は、9Fの食堂でカレーライスを頼んだ。僕がこのビルに来たとき、新しい環境と初めての仕事で、あまり食欲がわかなくて、食べたのがカレーライスだった。社員にはあまり評判が良くなかったが、僕はそう悪くなかったと思う。支払いのときに、古くからレジにいる人のところに並び、「長らくお世話になりました」と言ったら、手をとめて「今日で最後なのですか?」と驚いていた。おそらくはその方も僕のことを覚えていたろうけれど、最初で、そして多分最後の会話。食堂は系列の会社が営業しているからやっぱり今月で店じまいだ。

荷造りは少しずつ手をつけていたから問題なく終わった。古い資料を捨てて、シュレッダーをかけて、使えるものと使えないものを廃棄して。引っ越しは何度も経験しているけれど、いつも感じるものがある。僕たちは結局消費しているだけじゃないかと。でも、引っ越しだから荷物を片づけなければならない。メランコリーになっている暇はない。最後はいつものようにあきらめてとにかく箱の中に流し込む。

開いたいくつかのラテラルの中の物は、前回の引っ越し以来一度も開いていないし、使っていない。おそらくはこれからも使うことのないものだ。身軽になりたいのだけれど、「今度こそ捨てよう」と思っていても、どうしても捨てられないものがある。あきらめてダンボール箱につめて、ふたをした。捨てられない荷物はただラテラルの中に存在するだけではなく、自分の中にある。いつか荷物を捨てられる日がきたとしても自分の中の何かは消え去らない。多分。