朝、JR有楽町駅の改札を抜けて外に出たら、背の高い70歳くらいの男性がティッシュを配っていた女の子に、「地下鉄有楽町線はどこですか?」と尋ねていた。そのまま横を通り過ぎようと思ったら、女の子が反対側の出口のほうを指さし、「むこうのほうです」と答えていたので、つい「有楽町線ならすぐそこから行けますよ。自分もこれから行くところです」と言ってしまった。男性はかぶっていた帽子を脱いで、「どうもありがとうございます」と頭を下げ、ついてきた。ビックカメラのはいっているビルにある入り口はちょっとわかりにくいし、階段は長い。先に降りていったが男性はなかなかついてこない。下でしばらく待っていたら、奥さんらしい女性が一緒で、その女性をいたわりながら降りてきたので時間がかかったようだ。僕が待っているとは思わなかったらしく、少し慌てて降りてきた。

僕は階段を背にして、右のほうを指さしながら「切符売り場はあちらです」と教えて、「どちらまで行かれるのですか?」と尋ねた。男性は、「市ヶ谷です」と答えた。どうもあまり普段出かけることが少なそうな気がしたので、切符売り場のところに行き、料金表で値段を確認して「160円です」と教えてあげた。男性は「どうもありがとうございます」と言って、「320円だ」と奥さんに話し切符を買った。僕は有楽町線が市ヶ谷に行くのか自信がなかったので、改札のところに座っている駅員さんに「市ヶ谷はこちらで良いですか?」と尋ね、「そうです。2番線です」と言われて、階段に張られているパネルを見ながら、「市ヶ谷は2番線で4つめの駅ですよ。どうぞお気をつけて」と答えて、自分は1番線で電車を待った。

別になんということのない出来事だけれど、なんとなく自分の胸に残ったものがある。だからここに書いておこうと思う。