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今から20年くらい前、僕は磯子区民だった。週末になると馬鹿みたいにオフロードのバイクに乗って16号線を南下して、その日の夜に戻ってきてということを繰り返していた。京急富岡を出て、能見台を過ぎ、ゆったりとした金沢文庫の次は、金沢八景がある。金沢八景は僕が横浜で一番好きな場所だ。シーサイドラインがひかれて、雰囲気はずいぶんと変わってしまったけれど、今も時々そこを訪れる。そこから追浜を過ぎて、横須賀中央に出て、観音崎を通り過ぎる。数年前同じ道を車で通ったけれど、様子が変わっていて寂しかった。もっともそれは単車から眺める景色と車から眺める景色の違いもあるのだけれど。
この方面に出るときはいつも数年前に開通した環状2号を利用している。横横に乗らないで済むからとても便利だ。この写真は、用事を終えて帰り道、357号線を北上して環状2号線に左折する交差点で信号待ちをしながら撮影したものだ。携帯のカメラで画角が広すぎてわからないが、画面左手には丘の上の旧磯子プリンスホテルが映っている（工事用に白い布で覆われている）。磯子プリンスは、閉鎖される前に横浜プリンスという名前になっていたけれど、僕の中ではやはり磯子プリンスであって、それ以外の名前はない。長い坂を上ると、囲み込むようにラウンドになった建物があって、ロビーがあって。磯子プリンス（ホテルの建物）が解体されてから何ができるのかしらないけれど、そこは僕にとってずっと残っていて欲しい建物のひとつだった。せつない気持ちで、ハンドルを左に切った。
