保険会社からの手紙
金曜日に家に帰ると保険会社から手紙が届いていた。中を開くと、オタワの出張のフライトで壊れたスーツケースの修理の状況を問い合わせる内容だった。帰国後すぐに連絡をいれておいたのだけれど、いろいろと忙しくて気がつくともう3ヶ月近く経っている。
壊れたスーツは、昔横浜そごうで購入した松崎という会社のFeather Weight(羽のような軽さ)というシリーズで、かれこれ十数年以上使っていることになる。TOMOYOの関連の出張では、いつも使っていた。修理について既にインターネットで調べていたが、松崎の製品サポート窓口は木場にあり、自分が住む横浜からはちょっと遠いので、時間ができたら持って行こうと思いそのままになっていた。保険会社の手紙では、状況について記入し投函するための様式が同封されていたが、フリーダイアルも書いてあったので電話してみた。
「わたなべさん」という担当の方とお話すると、「ケースをメーカに送付してその送料も修理費と一緒に請求してもよい、いずれにしても保険を使う場合には修理費の見積もりが必要です」という。今さらながら自分で持って行かないといけないという間違った思いこみに気がついた。今日は土曜日で会社が休みなので、早速ケースを購入した横浜そごうに持ち込んだ。スーツケース売り場は昔は確か1Fにあって結構広かったのだけれども、今はB1Fでしかもかなり端のほうにこぢんまりとしている。
スーツケースと言えば、以前松屋銀座に見に行った白洲次郎展で、白洲次郎、正子夫妻が利用していたスーツケースが展示されていたのを思い出した。ヴィトン製の大きな、しっかりしたもので、確か持ち手の部分を修理してあるというような説明があった。今は所有者をなくした一組のスーツケースを見ながら、ヴィトン製品の造りの確かさと、白洲氏のダンディズムあふれるエピソードに思いをはせたのはつい先月のことだ。
わたなべさんと電話で話したときに、「おかげさまでこのFeather Weightというシリーズは、本当に長く続いているので、修理の内容については現品を見ないとわからないのです」と言われていた。壊れたのはプラスチックの留め具の部分だけだが、場合によってはベルト全体を交換しなければならないこともあり、その際に同じパーツがなければ現行の近いもので取り替えることになるらしい。スーツケースには2本のベルトがあるから、その場合は当然2本とも替えることになる。
横浜そごうで担当の方にスーツケースを預けて立ち去るとき、あらためてながめる自分のスーツケースは見た目がかなりくたびれていて、言ってみればみすぼらしい感じがする。1, 2万円もだせば、今風で新しくて便利でおしゃれなものが並んでいるけれど、でもそれでは一緒に旅をしたこのケースに申し訳ない気がする。白洲さんのスーツケースとは多分2桁価格が違うんだろうけれども、修理しようという気持ちはきっと変わらないと思いながら売り場をあとにした。