日章丸事件

平日はほとんどテレビを見ないのだけれど、少し前から村上龍氏のカンブリア宮殿を見るようになった。今日のゲストは、出光興産の社長、天坊氏だ。

番組の中で紹介されたエピソードのひとつが心を打った。それは1953年の出来事で、出光興産が自分で中東にタンカーを送り、石油を買い付けて帰国したという話だ。当時、石油はメジャーと呼ばれる国際資本を介してでなければ調達できなかったのを、出光興産が初めて直接買い付けを行い、そして無事に石油を搭載して帰国したのだ。この出来事は、「日章丸事件」として記録されている。

上記の記事を読むと、英国の会社が積み荷の権利を主張して出光興産を訴えたとあるのに驚くが、番組中、天坊氏は「(メジャーが)出光のタンカーを積み荷ごと海に沈めようとしていたのを避けて帰国した」とコメントされていた。出港の際には、船長と機関士しかその使命を聞かされていなかったという。タンカーを失えば会社としても致命的な打撃を受けるという状況の中、死をも覚悟して中東に向かったその志に、それから50年以上を経た今、なつかしく思いをはせた。