けものは野に放たれた

今年初めて開催されたLinuxの総合会議、LinuxCon2009で、"What does it mean being an Open Source project manager in an Enterprise"(企業において、オープンソースのプロジェクトマネージャになるということの意味)という長いタイトルで講演を行った。

今までいろいろなところで講演を行ってきたが、これほど時間をかけて準備した講演もなければ、これほどまとめるのに苦労した講演もなかった。講演の中には、名言の引用を多数行っているが、書籍、Webなどで集められる限りの名言を集めた。その中から講演の主題に沿うものを選び、資料の流れに合わせて配置したが、それにもっとも時間がかかっており、この形に落ち着いたのは現地に到着してからだ。

この講演は、TOMOYO Linuxの技術的な発表ではなく、企業におけるオープンソースプロジェクトの特殊性について取り上げている。オープンソースプロジェクトのマネジメントについては、何冊か書籍がでているが、この発表では実際にプロジェクトを運営した経験やエピソードを盛り込んでいる点がユニークであり、珍しい。

資料は、完全なものではないが、自分が言いたかったいくつかの主題は、うまくその中に閉じ込めることに成功している。特に難しい内容や表現はないが、かなり本質的な部分に踏み込んでおり、それはオープンソースの世界での活動の経験がなければ真に理解することはできないだろう。なので、この講演は日本ではあまり理解されず、LinuxConで発表される意義がある。

資料の作成には足かけ3ヶ月以上かかっているが、講演の前日に思い立ち、実際の講演では新たに資料を書き下ろしてそれを使用した。二つの資料は、Enterprise EditionとOpen Source Spirit Editionという名前をつけ、カンファレンス事務局にはEnterprise Editionのほうを登録している。Enterprise Editionは、講演資料というよりは論文、小説のような構成、装幀になっているが、一夜漬けで書き下ろしたOpen Source Spirit Editionは見た目はこらず、主題をよりストレートに、より深くえぐっている。書いた時期が遅い分、内容は深くなっている。

この講演には、いくつかの目的があるが、そのひとつは、海外の講演者と対等なレベルで勝負したいということがあった。それがどれだけ成功しているかはわからないが、過去の平均的な日本人の講演資料や講演とは違ったものになっていると思う。