生まれて3着目のコート

今年久しぶりにコートを買ったのだけれど、昨日、初めてそのコートを着て会社に行った。

僕は大学を卒業するまではずっと自宅で、衣類は両親が買ってくれたものを適当に着ていたから、変な話だけれど自分で服を買うことに慣れていなくて。就職して、最初の冬に「そろそろコートを買っておかないといけないな」と決意して、渋谷に出かけて東急デパートにはいった(僕が住んでいた横浜にも十分コートを買えるところはあったのにと今考えるとなんだかおかしい)。

最初のコートは文字通り一日かけて悩んで買った。店員の方もさぞあきれたと思う。対応してくれた女性の方はさすがに顔は覚えていないけれども、雰囲気や話し方は今も覚えている。悩み抜いたあげく(「悩んだ」という表現は適切ではないかもしれない。僕は実際に「買う」という決断をできなかっただけなのだから)購入したのはDAKS*1のシングルトレンチで、確か79,800円くらいだった。「ものがしっかりしていますから、裾がすりきれるまで10年近くも着られますよ。そうなってお手入れして欲しいと持ってきてくださるお客様がいらっしゃいます。ボアは中綿がダウンのものも別売されています。」と店員さんの言葉を今も覚えている。僕は実際このコートをまる7年着ていた。その色合いも着た感じもぴったりで、とても気にいっていた。

2着目のコートは、仕事でアメリカで暮らしていたときに買った。バーバリーのトレンチで、帰国する前に「日本で買うときっと高いだろう」と思って買ったのだけれど確か日本円換算で3,4万円だった。当時とはレートが違うだろうけれども国産のバーバリーの値段と比べてもどう考えても半額以下だ。

今年買ったコートは僕にとって3着目になる。最初はバーバリーのダブルの輸入物*2を買おうと思っていたのだけれど26万円くらいもして、どうも身分不相応な気がしていたら、丸善の閉店セールで黒のシルクのトレンチがあって、なんとなく良い雰囲気だったので購入した。最初のコートを買ったときは丸一日かかったけれど、このコートは30分で決めた。僕はそれだけ大人になったのかな?

新しいコートを着て歩くのは、新しい恋人と一緒に歩いているような気がする。少し遠慮して、相手の様子を気にしながら歩く。僕はこれからの人生であと何回コートを買うのだろうか。

*1:その頃僕はDAKSというブランドは全く知らない

*2:僕の体型は国産のものより輸入物のほうが合う。特に着丈が。