あなたには見えない

僕はあなたを見ているけれど
あなたには僕は見えない
あなたは違うものを見ているから

僕は話しかけたけれど
あなたには聞こえない
あなたはヘッドフォンをつけているから

僕はあなたを見ていたのだけれど
あなたには見えない
あなたの心の中には
僕のための場所がないから

夏休みにフェリーで旅行をした。鍵もかけないし、時計もはめる必要がない田舎で短い休日を過ごして、東京に戻るためのフェリーに乗った。サングラスをかけて、ヘッドフォンをした若い男性が電源コンセントの近くに場所をとり座っていた。その光景を見たとき、なんだか寂しい気がした。「あなたには見えない」というフレーズが頭に残っていて、それがいつか形になるのを待っていたら、今日たまたまある出来事があって、こんな形になった。