一目ぼれ

コットンのシャツを買おうと思って港北ニュータウンMosaicモールに出かけた。Eddie Bauerの店で色々見ていたがなかなか気にいるものがない。少しがっかりしてお店を出ようとしたら、ちょっと変わったデザインのショートコートがセールになっていて、袖を通していると店員さんが話しかけてきた。適当に相槌をうっているとどんどん色々な商品を持ってくる。他にセールになっている商品はないのかと尋ねるとすごいグリーンのダウンジャケットを持ってきたが、とても自分が着るような色ではないので難色を示していると、「店頭には出していないし、セールにもなっていないですが」と断って、濃紺の表生地がコットンのダウンを持ってきた。「この製品はカラコルム登山を記念して作られた製品で、Eddie Bauerのお店にも定期的には入らない、自分はここのお店に勤めて3年目になるが、3年前に一度見ただけだ。サイズはこれしかないし、価格は高いが大変暖かく良いものだ」、だいたいそんな意味のことを説明してくれた。

店員さんには悪いが、自分の中では最初に袖を通して鏡を見たときにその製品を買おうと思う気持ちができていた。一目ぼれだ。思い出すとこの前、同じように一目ぼれしたのは、SONY液晶テレビだ。僕が買ったテレビには、折りたたみ式の立体的な形状のリモコンが付属していて、僕はそのリモコンを見た瞬間に自分はどうしてもこのリモコンがついたテレビを買おうと思った。その前の一目ぼれは、ずっと昔で、バイクに乗っていた頃だ。通勤経路のバスから見えるところにいつも1台のオフロードバイクが停められていた。赤と青と白の原色に近い組み合わせで、僕はバスの中からそのバイクを見るたびに「なんてセンスの悪いデザインだろう」と思っていた。そして、何ヶ月かが過ぎていつしか僕はそのバイクのことが頭から離れなくてなっていた。ある日HONDAのXLR-250Rというそのバイクを買いに行った。多分、初めて見た日から恋していたのだと思う。

一目ぼれするような製品に出会うこともそれほど多くない。それを手に入れたとしても幸せになるとは限らない、長くつきあえることもあれば、すぐに手放すこともある。本物の恋と同じように。