「電話営業」

よく会社に関係のない電話がかかってくる。一番多いのは、「マンション経営」で、ワンルームマンションを所有して大家さんになって、家賃でローンを返済しながら税金対策や老後の財産になるという話だ。多分、今まで軽く4, 50本は電話を受けたことがある。

なぜだかわからないけれど、こうした電話による勧誘は会社や業種が違っても何かが共通している。簡単に言うと、声が大きくて、不自然に明るい。「最初の一声」を聞いたときからわかる。百発百中だ。でもわかったときにはもう遅い。

こうした電話を受けると、とりあえず相手が一区切りつけるまで黙って話を聞く(話さないといけない内容が決まっているのだ)。それから、「興味ありません」と答える。すると決まって「どうして興味がないのですか?」とか「同じような電話がありますか?」とか言われる。それには、「本当に興味がないんです」と返す。ここからはいろいろなバリエーションがあるけれど、多いのは「話を聞かないとわからないでしょ?」とか、「他の会社から同じような話を聞いたことがあるか?」だ。このあたりからの対応は難しい。

過去、「同じような内容のSさんの話を聞いたことがあります。でも興味がありません」と正直に話したことがある。すると、「何故Sの会社の話を聞いて、この話は聞けないのか?」という流れになる。だから、そうしたことは言わないで、徹頭徹尾「興味がないんです」を繰り返すようにしている。それが何度か続いたら、もう相手の話をさえぎって、「では切りますよ。すみません」と言って受話器を置く。勿論こちらの気持ちは良くない、だけど他にどうしたら良いだろうか?

今日かかってきた電話もこうして受話器を置いた。すると、すぐにまたかかってきた。電話を取り次いでくれた派遣の女性がすぐ受話器をとって無言で切った。するとすぐまた電話が鳴る・・・。そのうち担当の新入社員が電話をとった(とってしまった)。そして、「なんだかずいぶん怒っていますが」と言う。

僕の働くフロアには40名くらいの社員がいる。その全員に自分宛の電話を取り次ぐなというのは無理だろう。それに相手が激昂しているのなら、一方的に無視するのは相手にも良くないし、会社にも迷惑をかけるかもしれない。だから電話をとった。「なんですか、これは」が最初の言葉だった。

彼(たまに「彼女」もある)が怒っているのは、「電話営業や自分の仕事を馬鹿にされた」ということのようだとわかった。相当怒っていて、「会社や自宅を調べて乗り込むから」のようなことを言うし、もはや営業言葉でも通常の会話でもない。感情を逆撫でしないように話を聞き、「その仕事やこうした営業を否定したり馬鹿にしているわけではない」ということ、また自分が非常に忙しいので、こうした電話をもらうと迷惑であること、会社としても迷惑であることを丁寧に説明した。もうこうなってしまうと一方的に話を打ち切るつもりはなく、30分以上も会話しただろうか。

実際僕はあらゆる業種や営業に偏見は持っていない。仕事熱心な人には敬意を覚える。先物だって(一度話を聞いたことがある)、やりたい人がやれば良いと思う。法律と常識の範囲で、リスクをわかった上で何をやろうと基本的にはその人の判断だ。だが、電話の勧誘は「とにかく話を聞いて」、とか「内容を聞かないとわからない、わからないで判断できない」と攻めてくる。それは一理あるが、では僕はあらゆる会社、業種の内容を説明を聞かないといけないのだろうか?「時間の無駄だから他の人に電話して下さい」という言葉を言うのは、「自分はどれほどリスクがなくて儲からないとしてもそれはやらない、だから興味を持つかもしれない他の人に電話したほうが、あなたのためにも有意義でしょ」という意味だが、それが通じない。「どうしてやりたくない?」と聞かれるが、それはおおきなお世話だ。放っておいて欲しい。

僕は基本的には電話をかけてくる人自体には悪い感情は持たない。その人の仕事だから。多少筋は違っているような気がするが、そこまで熱心に言う人であれば会って話を聞いても良いと思っている。そうすると今度は、話を聞いてやらないのはその内容を理解していないか、悪いと思っていると決めつけられてややこしくなるのだが、それは致し方ない。きっと昔、こうした営業スタイルを発明した人がいるのだろう。その人に文句を言いたい気がする。

この人との対応が終わってから数時間して違う会社から同じ勧誘の電話がかかってきた。こちらは一方的に電話を切らないですんだ。切りたくて切っているわけではないから、そうした時はほっとする。二人目の人はちょっとのんきな人で、「近くにきているのでお仕事終わったらお話したい」と言って、僕が「終わるのは午後10時とか11時がほとんどです」と答えたら、「では土日お休みですよね?」と言ってきた。丁重に「平日忙しいので、週末は用事がたまっているし、少しでも自分の時間を持ちたいので」とお断りした。

ということで、やらないといけないことがやまほどあるのに、今日は完全にペースを崩されてしまった。やれやれだ。