「個人を守り社会を壊す」

今日の読売新聞に「国家の品格」で注目されている数学者藤原正彦さんのインタビューが掲載されていた。個人情報保護法に感じていた違和感が明快に整理されていた。

  • 個人情報保護法は実際には個人情報隠蔽法になっている。社会は点である「個人」と線である「人間関係」でできているのに、保護法は点を守り線を切っている。社会を壊す現象が起きている。
  • 日本人は何でも行き過ぎてしまう。点と線、どちらが強くなりすぎてもいけない。行き過ぎると矛盾につきあたる。それが矛盾しないのは数学だけだ。常識と節度を持って対応するのが成熟した国家のあり方だろう。
  • 日本人はそもそも道徳論理で行動を自己規制し、法律をあまり必要としない国柄だった。それを取り戻すべきではないか。多くの法律がないと社会を動かせないということは恥ずべきこと。法律の網で隙間ができる。それを抜ければOKと考えることを規制するためにまた法律ができる(きりがないしいつまでも完成しない)。道徳論理は全体を覆うから隙間がない。
  • 法律がなくても、自然に社会が機能する美しい日本社会を、世界にも教えよう。

以前の日記に書いた建築強度の話を思い出した。法律や基準や監査のための組織を作ったとしても、それが安全につながるわけではない。安全な建物をたてるための知識や情報は必要だろうが、安全な建物を、良い建物をたてようとする気持ちが出発点になる。道徳が薄れて、法律が増え続ける社会の行く末は暗い。