「チョコレートの国の侍」vol.2公開

掲載されている内容は、インプレスIT(ThinkIT)の編集上の都合により、オリジナル原稿の1/3かそれ以下にコンパクトになっている。削られた部分を含めて、少し記事の内容を補足しておく。

この回はブリュッセル到着翌日の午後7時過ぎまでについて書かれているが、この日は本当に歩いた、というか迷った。大人になってからこれほど歩いた一日はなく、翌日太ももの裏側が痛くなった。何故、それほどまでに迷ったかを考えてみると、記事にあるように道路がいたるところ放射状になっていて、方向がわからなくなるし、日本であれば円山町とか歌舞伎町とか(何だこの例は)エリアがわかるところが、それに該当するものがなくて通りの名前しかない。その通りの名前が、フランス語かオランダ語で、全部同じように見える。最後に、良い地図がない。ブリュッセルの街を歩くと、いたるところで地図を広げている人を見かけたが、多分誰でも迷うはずだ。

「トラム」については、写真を見た通りだが、記事に書いたように出入り口の区別はないし、乗車するときに料金を払うわけでもない。性善説に基づいているのかどうかわからないが、無賃乗車しようと思えばし放題だ(見つかったら罰金を科せられる)。一応車内で切符を売っているが、車掌さんはいなくて、運転手さんに頼まなければならない。運転手さんは当然運転していて、切符を売るときは透明になったパネル越しに振り向いてそこの窓でやりとりをする。

乗車や料金の仕組みはともかくとして、許せないのは現在地の表示や次の停留所の表示、案内がないことだ。「どこにいるかわからなければ降りられない」(それって交通機関としてどうよ?)。停留所には、一応名前は書いてあるが、非常に見にくいし、前後の停留所の名前はほとんど読めない。おそるべし、トラム、おそるべし、ブリュッセル。なお、この記事の記載内容については、記事に出てくる日欧産業協力センターの方に事前に査読をお願いしているので、私の勘違いではない。

「151」に電話したのは本当で(これに限らず記載されている内容はすべて事実に基づいている)、かけようと思ってかけたわけではなく、「あぁ、つながらない、困ったなぁ」と思ってなんとなくダイアルしてみた。表現が大幅に切り詰められていてニュアンスが伝わらないと思うが、電話がつながったときは本当に驚いた。自分ではなくても誰でも驚くと思う。DoCoMoのサポートは、料金と設定に分かれていて、自分はその両方の方と話をした。「外国にいてこの番号にかけるときはかなり困っているはずなので、いろいろ事情があるのだろうとは思うが、できれば窓口はひとつにして欲しい」と要望をお伝えした。いずれにせよ、現地で日本語でこうしたサポートが受けられるのは旅行者にとって大変ありがたい。こうしたサポートが存在していることを多くの人に知って欲しいと思い、記事に追加した。

接続に利用したのは、定額データ通信に対応したA2502で、この機種は国内ではHigh Speed接続定額プランで利用でき、海外ではローミングとなる。特筆すべきはローミングについては、アクセスポイントの登録等の設定作業が不要で、日本にいるのとそのままの状態で使える。そのことを事前に調べておいたので、日本にいたときに「従量アクセスポイント」に接続を行っておいたが、フランクフルト空港で本当にそのまま使えたときはやっぱりちょっと感激した。一点注意を喚起したいのは、「ドコモ定額データプラン接続ソフト」を使用する場合、デフォルトの設定では、海外ローミングの料金表示がオフになっている。このソフトでは料金の「概算」を表示するが、DoCoMo部分の概算のみしか表示されず、海外部分の概算は含まれない。かつ実際には海外ローミングの料金のほうが圧倒的にDoCoMoの通信料金より高額なので、表示内容を見て安心していても実際にはるかに高額の請求を受ける場合がある。しかも、記事に書いたように海外ローミングの請求(実績)は仕組み上時間的に遅れがあるから、忘れたころに接続ができなくなる。自分の場合はまさにこのケースだった。自分と同じように料金上限超過により通信ができなくなった場合には、サポートに電話をしても海外ローミングについては、一切理由や状況や説明は受けられない。DoCoMo側でもわからないからだ。できることは、上限料金をあげることだけだ。「上限金額」の設定は5万円が最低で次は10万円、それからは10万円きざみになり(今後変更されるかもしれないが、2008年2月時点の内容)、上限金額の設定は「義務」となっていて必ず設定しなければならない。私も聞かれたときに「5万円?まさか(笑)」と思いながら、設定できる一番低い5万円にした。まさかそれを超えるとは夢にも思わなかった。

今回の出張では、FOMAのマニュアルや海外利用の説明書を持参した。つながらなくなってからは、アプリケーションの再起動やOSの再起動など、通常考えられる措置(プロシージャ)を実行しているが、普通は原因が料金超過にあるとは思わないだろう(接続ソフトでそうしたメッセージを表示してくれたら良いのだが)。その場合、サポートに電話しようと思わなければ、トラブルは解決できず、代替手段がなければインターネットは利用できず、調べることもメールも使えない。それは大変な問題だ。ということを知っておいて欲しいと思って書いている。

日欧産業協力センター訪問の件は、ほぼ記事に書いたとおりだ。このセンターやヴルカヌスプログラムのことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思い記載したが、センター訪問はこの後の「ケチャップ強盗」にも関係している、というかつながっている。記事では「世界3大がっかり」となっているが、実はセンターを訪問していた時点では、「ベルギー3大がっかり」だと思いこんでいた。今回掲載前に査読をお願いして、「世界3大がっかり」と判明し、修正したものである。

写真では笑顔になっているが、このセンターに到着するまでにべらぼうに歩き回っており、へろへろに疲れていて変な顔になっているのが自分ではよくわかる。左から二人目の方が手に持っているのは、おみやげに持参したひな人形だ(そのほか日本のあられも持参した)。ちょっとおなかの大きな女性はこのとき妊娠していたが、記事公開の少し前に元気な男の子を出産されたとのお知らせをいただいた。

2ページ目のイラストでは、侍がトラムに乗ろうとしているが、実際には私はこの日はトラムには乗っていない(ということを伝えて変更をお願いしたのだが却下されてしまった)。もともとこの回で伝えたかったことは、「見知らぬ地にきて、その交通機関を利用するのは難しい」ということだ。路線、料金の体系、料金の支払い方などを知らずに外国の交通機関を利用するのは難しく、勇気が必要だ(勇気だけあっても駄目だが)。この後の回で言及したいと思っているが、その点日本のシステムはとても親切でよくできている。