BoF発表を終えて

今、オタワの現地時間で7/26(土)の午前2時35分、日本時間の7/26(土)の午後3時35分。BoFの発表について、記録をしておこう。今回はいろいろな意味で、反省すべき点が多い内容で、一言でいえば中途半端な発表だった。

BoFの参加者は20〜30人くらいで昨年よりも少し多かったかもしれない。発表については、用意してきたLSMのデータを調べてみた結果と、個人的な感想の組み合わせになったが、どちらもいたって中途半端な内容になってしまったし、両者のつながり(必然性)もなく、その点が最大の反省点だった。

どんな内容、発表だったら参加者や自分にとって有意義だったろうと考えてみたが、データの分析なら分析で本格的に調べて1時間説明するのならそれはそれで良いと思う。その場合、見た目(グラフの美しさやアニメーション)はこだわる必要はなく、今回はそうした小手先の部分に時間をかけてしまったのは一種逃げであり、自分らしくなかったということがやはり反省点だ。

しかし、いずれにしても過去の議論の振り返りはそれ自体有用な議論につながるものではない。発表の主題、テーマの設定自体が今回最大の失敗だった。もし、そのテーマでいくのであれば、LSMに限った話にしないで、LSMを例とした議論の分析、データの取得の方法を主眼として、手順と利用したツールも公開すればそれは事後LKMLでも紹介するに足る内容にすることは可能だろう。今回のBoFのひとつのありかただったと思う。

ただ、今回はMACやLSMは最初から前提となっているから、それよりは、LSMの議論について掘り下げるのがやはり本来のありかただっとと思う。データの調査はしなくても、単純に数が多い、あるいは重要と思う課題について、それを振り返る内容にして、それを説明、議論するべきだった。その場合は、さすがに現地にきてからでは間に合わないが、Linux Foundation Japanの講演が終わってからその作業に専念していれば、ある程度の内容にすることはできたと思う。もともとはそうした考えだったのが、結果的には自分をごまかしてしまったような形になり悔やまれる。発表を採択してくれたプログラム委員会や話を聞きにきてくれた人たちにも申し訳ない気がする。自分らしくない発表だった。

最初は何も質問がなかったけれど、吉藤さんがメインライン化の状況について聞いてくれたことがきっかけで少し議論になった。「あいまいな状態で理由もなく反対されている」という説明をしたら、Stephenが「そうではないと思う。彼らは過去反対の理由を説明していて、それに対して回答していない。だから彼らはNACKを示しているはずだ」と答えた。また「彼らの態度が良くないのは、答えるべき点にふれずに繰り返し同じ意味の提案を続けているからだ」とも言った。Stephenのその意見は思い当たるところがある。いくらなんでも感情的(好き嫌い)でNACKは出せないし、それが認められることもないはずだ。「理由を質問しても答えてもらえない」という答えがあるが、もし本当にStephenの言うような状況であるとしたら、彼らが一度答えた内容について再度それを説明してくれなくても、責めることはできないと思う。少なくともその前にちゃんと過去のやりとりを振り返るべきだ。

パス名に反対している人たちには、それだけの理由があるはずで、それこそがちゃんと振り返り、掘り起こすべき議論だった。LSM全ては読むことができなくても、TOMOYOの投稿であれば十分その全てを読むことはできた。それはBoFの発表がなかったとしてもやらなければいけないことだった。

Stephenに「今の時点でどう進めるべきか、あなたの考えを聞きたい」と話したところ、Stephenは「自分はこの採択についてのオーソリティ(決定権)は持たない」また「この内容についてのパスポート(これを見せれば合格する)もない」ということをコメントした。また、「自分は以前SELinuxTOMOYOの機能を反映することを提案した。KaigaiやYuichiはそのようにして、作業の結果はマージされている」とも述べた。これは昨年のBoFのことを言っていて、その提案に対して明確な回答ができていないことはずっと気になっているから、発言を聞いて胸が痛んだ。

StephenのあとにはCaseyもコメントをしてくれた。「パフォーマンスが良くなるなど、彼らにとってメリットを探してみたらどうか。自分はSmackでそれを行った」というものだったが、残念ながらTOMOYOの場合には、そうした形にはならない。与える影響を少なくする、対応を「お願いする」という形になるが、考えてみると、そうしたスタンスもおかしいのかもしれない。本来お願いすべき内容ではないからだ。そうすると結局パス名のMACの利点や意義が十分説明できず、納得されていないことが現在のTOMOYOの状況の根本的な課題かもしれない。Caseyは発表が終わってからもすぐに立ち去らず部屋に残ってくれて話をした。ひとつの方法として、ファイルシステムの部分とは独立にパス名を管理する機能を「横に」実現してみるというアプローチ(彼はbook keepingと呼んでいた)があるんじゃないか?と助言してくれた。言いたいことは想像がつくが、結局その機構はfsと無関係にはならない(分離させられない)し、仮にそれが可能だとしても効率に問題が生じるから難しいだろう。でも、Caseyが気にかけて考えてくれているのはうれしかった。彼は「今後もこの話題は注目する」と言ってくれて、「相談にのってもらえるか」と尋ねたら「是非そうして欲しい」と言った。

あとになって思い出したのだけれど、Caseyはまた「audit(ログ)の機能の強化として提案してみてはどうだろう」とも言っていた。MACとしてではなく、auditを強化(拡張)するものとしての提案はありかもしれない。

全体を振り返ると、限られた時間の中での作業としてはできることをやったとは思っている。ただ、テーマの設定が根本的に悪かったし、狙いがあいまいだった。また資料やデータについて中途半端な形で逃げになってしまったのは(発表を終えた後で強くそう思った)OLSの発表者として失格だった。反省して二度とこんな内容にならないようにしようと思う。

TOMOYOのマージについては、結果的に現在の状況を再認識することになったと思う。本質的なこと、本来やらなければならないことをやっていなければ、先はない。その意味で、振り返るべき時なのだと思う。

発表の前は結局寝ないで作業していたし、昼食も食べていなかった。食事を食べていないのは別に良かったけれど、寝ていなかったせいか発表の際には少し身体がおかしかった。少しぼんやりしていて、また変にのどがかわいていた。今までこんなことはなかった。体調管理という意味でも失敗している。今日(7/25)の夜にはCELFのBoFもあったけれど、起きていられないと思ったし、こんな気分で参加できないと思ったので、中村さんと武田君にあとから話を聞かせてもらうことにしてホテルに戻り、そうしてそのまま眠った。そして起きて、この日記を書いている。問題は多く、先は長い。でもこの戦いはまだ続いていて、可能性が残されている。気持ちを持ち直して、再度立ち上がり挑戦しようと思う。