ちょっと気持ちのいい朝

今朝はいつもより少し早く家を出て、いつもより少し早く横浜駅東海道線のホームに着いた。そうしたら、上り電車が停まっていて、ドアが開いている。どうしたのかと思ったら、アナウンスがあって、よく聞き取れなかったけれどもどうやら信号機のトラブルがあったようだった。そうこうしているうちにいつもの時間になり、さらにそれを過ぎても電車は発車しない。ドアは開いたままだ。新たにホームにあがってくる多くの人が電車に乗り込み、少しの人が見切りをつけて電車から出てくる。最初から次の電車に乗るつもりだった自分は、列の先頭で黙って見ていたのだけれども、「もう限界だろう」と思っていたときから、やっと発車したときまでには多分10人くらいも乗り込んでいた。ぎゅうぎゅうだ。

それからさらに何分か待ってホームに電車が到着したけれど、そのときにはもうホームは人で一杯だ。先頭に並んでいる自分はなんだか早く乗らないといけないような変な気分だ。勿論、その電車もぎゅうぎゅうで、どこかにつかまっていないと危なくて仕方がない。川崎で少し降りて、たくさん乗り込んできて、品川ではさすがに結構たくさんの人が降りて、自分の前の座席が空いた。いつもそうしているように、自分よりこの席に座るのがふさわしい人がないか見渡したら、後ろに女性が立っていた。おばあさんというほど高齢ではないけれども、荷物を持っていたし、満員の電車でいかにも疲れているようだった。「良かったら座りませんか?」と声をかけたら、「いいんですか?」と言って座ってくれた。そのまま新橋まで行き、そして終着の東京駅で下車しながら、「今日はうまく席をゆずれたなぁ」とちょっと気分が良かった。経験ある人ならわかると思うのだけれど、気持ちよく座席を譲るというのは結構難しいんだ。

それからいつものように有楽町まで歩き、途中TOKIAのビルで銀行の通帳を記帳したのだけれども、2台あるATMの機械の右側のスクリーンに銀行のカードが置いてあった。ちょうどスクリーンの中心に。きっと誰かが見つけて、でも届ける時間がなくて、次に立ち寄る人に託したのだろう。その志を継ぐべく、カードを持ってビルの中にある受付の女性に声をかけたのだけれども、パンフレットの写真にあるような笑顔ときれいな声で「これはビルの管理部門が担当になります」という返事が返ってきた。そこでお礼を言って教えてもらったところに行くとただドアがあるだけで、表示も呼び出しも何もない。仕方なくドアを何度かノックしていたら、女性がでてきて、事情を説明すると、「ああ、それなら奥のほうにあります」と言う。自分は「すみませんでした」と「ありがとうございました」というようなことを言って、さらに奥のほうに向かった。そこにはちゃんと窓があって、中には帽子をかぶり警備らしい制服をきた人がいたので、今度こそ間違いない。カードを見せながら、3回目の事情を説明すると、少し驚いた様子で、用紙を持ってきてこれに記入して欲しいと言う。用紙に発見日時と状況、自分の住所と名前と電話番号を正直に記入すると、「これで良いです」というので、やっと見知らぬ誰かに託されたジョブを片付けることができた。何か少し間違っていて、何か少し改善できるような気もしたけれども、でもとにかくカードを届けることができて、とてもうれしかった。

そのうれしい気持ちを抱えたままTOKIAを抜けて、有楽町の国際フォーラムの中に入り、エスカレータで下に降りる。カードを落とした人はきっといつか気がついて、最初にATMのところに行き見当たらないので落胆し、その後で管理窓口に行くだろう(行って欲しい)。そして、「届いていますよ」と言われたら、どんなにうれしいだろう。自分の名前や連絡先がなければもっといいのだけれど、とにかくカードを忘れた人が喜んでくれるといい、そう思っているとさらに楽しい気分になった。そこからいつものように有楽町線に乗り、豊洲に着いた。気分が良かったから久しぶりにコーヒーを買って、いつもより30分くらい遅れて会社に着いた。たわいもない話だけれど、自分にはなんだか気持ちのいい朝だったから、その記念にここに残しておこう。