「再会」

最初の講演は、黒髪で若いHarald Welteの"How and why to work with the Kernel "だった。いわゆるカーネル開発に関する内容で、それ自体は(今となっては)自分にとってそう新しい話はなかったのだが、話を聞きながら何かひっかかるものがあった。どこかで彼に会っている、そんな気がしてきた。でも、どこで?

本人に聞いてみれば良いと思うかもしれないが、相手や状況に関係なく、何も具体的な情報や記憶がないのに確かめてみる気はしなくて、ずっと確認しないでいたが、やがて「もしかしたら」と思い始めた。今年の2月にベルギーで開催されたFOSDEM'08だ。

FOSDEM'08TOMOYOの話をしたが、そのときの自分の発表について、中国語でブログを書いた人がいる。名前はなかったが、「アジアからの参加者は彼(私のこと)と自分だけみたいだ」と書かれていて、そのブログはThinkITに書いた報告の中でも紹介している。でも、Haraldは髪は黒いが、ちょっと国籍不明な不思議なところがあるが中国人には見えない。確信が持てず質問できなかった。

すべての発表が終わってからspeakerは主催者の厚意により夕食に招待された。その席にHaraldもいたが、彼は英語も中国語も話せることがわかった。しかもヘルメットを持っていて、どうやらバイクで会場に来たらしい(ここに住んでいるのか?)。他の人と話をしているのが聞こえてきたが、ヨーロッパや中国にも頻繁に行っているらしい(何者だ?)。疑惑はさらに深まった。

どうしても気になったので、ホテルの部屋に戻ってから、FOSDEM'08の写真を探して確認してみた。激しくピンぼけしているけれど、髪型や雰囲気がやはり「彼」ではないかと思い、その写真を添付し、中国語の記事を引用して、FOSDEM'08というサブジェクトでメールしてみた。夜中に返事がきていて、「確かに自分はFOSDEM'08に参加し、あなたの講演を聴きましたよ。あなただとわかりました」という内容だった。FOSDEMでは彼とは話をしていない。彼はただ「参加者」の一人で、自分から見て左手の最前列に座り静かに話を聞いていた。その彼と今、台湾で再会した。自分が感じたこの不思議さは、おそらく当事者でない人には理解できないだろう。鳥肌はたたないし、感動したわけでもない。ただ、静かに「つながっている」と思った。そのことにどんな意味があるのか、どうして「つながっている」のかはわからない。でも確かに何かがつながっている。