魅惑のK2テクノロジー

少し前にasahi.com録音ができる携帯音楽プレーヤー ビクターalneoというタイトルの記事を見た。音質が良くて、レコーディングもできて、FMラジオもついているという。興味を持って調べていたら、(この機種には搭載されていないが)VictorではK2という技術を開発していることがわかった。それでK2についての説明のページを探して読んでみたら、サンプリングされたデジタル信号のデータに対して一種の補間を行うことにより圧縮前の元の音に近づけるというものらしい。

サンプリングされて階段のようになった正弦波のデータをなめらかに補間するというのであればそれは想像がつくのだけれど、K2は間を補うだけでなくオリジナル以上の情報(ビット)を追加する。実際の音楽は正弦波のように単純ではないし、CDがもともと持つ以上のビットを追加するなんて魔法みたいなことができるのかと思ったが、価格.comamazonで実際に使っているユーザの声を読むと非常に評価が高い。「もうiPodには戻れない」という声が多くある。また、Victorでは、レコーディングやスタジオでの作業にもこのK2の技術を適用しているらしい。

こうなると気になって仕方がない。会社の帰りに有楽町のビックカメラに寄ってみたら視聴できるようになっていた。聴いてみたけれど、まわりが騒々しいし、使われていたヘッドフォンがあまり良いものでないので、正直言って違いはよくわからなかった。結局聴いてみないとわからないので、旧製品となって価格が落ちていたモデルを購入した。

愛用しているオーディオテクニカのヘッドフォン、ATH-EC700Tiを使って、iTunesリッピングしたデータ(AAC 128K)をいくつか聴いてみた。音の響きや余韻といったディテールが追加されて、これまで聞こえなかった音が聞こえた。要するに確かに「音が良くなっている」。今まで、通勤途中ではSonic StageでATRAC 192Kで取り込んだものをDoCoMoSO905iで聴いていて、それはそれで悪くなかったのだけれども、同じ音源をAAC 128Kに落としたものをVictorのalneo XA-C210で聴くと、あきらかにビット数の低いAACのほうが音が良い(より音楽性が高く感じられる)。

alneoのシリーズはK2を搭載していて音が良いのが最大の特徴だが、USBマスストレージクラスでPCにつなぐことができて、iTunesで取り込んだデータをドラッグ&ドロップできるのも便利だ(Sonic Stageでは、ライブラリのデータを独自で管理していて、アルバム単位で取り出すことはできない)。iTunesで取り込んだ結果をalneoにフォルダごとコピーするとジャケット写真とアルバムの情報もちゃんと反映される。データ形式もMP3, AAC, WAVに対応しているからSonic Stageのような例外を除けば、ほとんどの場合過去の資産が活用できるはずだ(しかも、今まで聴いたことがない音質で楽しめる)。

自分が購入したのは既に製造が終了しているXA-Cのシリーズで、最近ビックカメラヨドバシカメラなどの店頭で格安で販売されており、オークションでも売られている。容量、バッテリー時間などは現行機のほうが優れているが、現行機にない利点もある。ステレオ(デジタル)レコーダーとして使えて、Line-inの録音も可能(アナログ音源の資産をデジタル化できる)、オートチューニングのFMラジオも搭載していてラジオの録音もできる。

購入してから、AAC 128K, 198K, 256K, MP3 Lame(VBR)など色々パラメータを変えて音の違いを調べているのだけれども、自分にはほとんど有意な違いは感じられない。K2がどれほど優れているにせよ、オリジナルのビットレートが高い方が有利なのは間違いないわけだが、結果としてその違いがでにくくなっているように感じる。自分には、今のところK2をかけたAAC 128Kで十分だ。