同窓会みたいに

1月の中旬に懐かしい人からメールをもらった。昔、放送の仕事をしていた頃に仕事をお願いしていたN社のTさんで、内容は「お時間をいただけませんか?」とある。「以前お世話になった他のメンバーも一緒に」という。どちらかというと助けてもらったのはこちらなのに。いくつか日程の候補を知らせていたが、今日目黒で待ち合わせることになった。場所は最初豊洲の近く、新橋あたりでと入っていたが、相手の会社の方は新宿なので遠いだろうと思い、品川かその付近、中間あたりがどうですかとお話したところ目黒になった。

少し遅れて目黒駅に着くと、営業の方が体調を崩したということで、Tさんの他は3名が待っていた。こちらは自分だけだ。駅から3分くらいのお店に入ったが、なじみの店ではなくこのためにインターネットで探したという。「料理など、調べてみたら評判が良くて。こういうのは営業の仕事ですから」とHさんが笑いながら言う。

Tさんのところに仕事をお願いしていたのは、いつごろだろうと考えたら、BSデジタルデータ放送が始まる前だから、もう10年前になる。その頃自分は、小さくて難しい仕事ばかりしていた。小さい案件だからあまり稼働をかけらないから、社員は一人(自分だけ)かせいぜいもう一名で、提案、設計、構築から保守(放送だから24時間365日だ)までを担当する。パートナーさんには仕事を出すというよりは一緒に仕事をするという感じだった。

突然の連絡だったので、最初聞いたときは「もしかしたら何か頼み事でもあるのかな」と思っていたけれど、何もないことはすぐにわかった。話は自然、昔の苦労話になる。話すにつれて、どんどんいろいろなことを思い出す。もう10年も前のことなのに。N社さんには技術面だけでなくて、費用面でもずいぶんと無理なお願いをしたことがあった。プロジェクトが99%行き詰まったことがあった。12月の28日、当時渋谷にあったN社さんのビルに行き、社長のIさんに事情をお話して支援をお願いした。仕事納めの日で、にぎやかな声が流れる中、事情を話し、不本意な経緯ではあるけれどもお客様に迷惑をかけたくないので、なんとかしたい、支援をして欲しいとお願いした。ずっと黙って話を聞いて、そしてTさん達に対応を指示してくれたIさんはもう退職されてしまった。その恩は、自分が生きている間は忘れることはない。

話しながら、同窓会のようだと思った。それもすごく親しい友人達との。考えてみたら、その頃も今も自分のやっている仕事は、社内ではあまり知られていない。「ちゃんと仕事をしたい」という気持ちは、どうしようもなく変わっていない。それはもちろん悪いことではないけれど、体面を気にしないし、ときには会社を敵にしてしまうこともある。不器用だ。

その頃も今もあまり「えらく」なっていなくて、特に何もしてあげられない自分に、この不器用な自分に会いたいと言ってくれる人がいる。そして、一緒にやった仕事の苦労を懐かしみ、お互いを讃え合うことができる相手がいることを、かけがえのないことだと思った。

翌日、Tさんと他のメンバーにお礼のメールを書いた。「まるで同窓会のように楽しい時間を過ごさせていただきました」と書いた。