牛乳を買いに行って靴を買う

牛乳がないのでいつも買い物をしている近所の生協に行くと、お店の中で靴の出張販売をしていた。売り場の中に、コの字の形にラックやら、靴の箱を組み上げて、その奥に店員さんらしき方が座っている。

ただ靴を売っているだけなら通り過ぎたのだけれど、置いてあるチラシや張り紙に、「健康」とか「快適な歩行」という言葉があり足をとめた。自分は足のサイズは27cmで、それは別に特に大きくはないのだけれど、足の甲が結構高くて、小さな頃から靴選びには苦労している。アシックスのPedaraというウォーキングシューズを購入してからは、ずっとウォーキングシューズ路線で、「軽くて柔らかい」靴を履いているが、気に入ったデザインのものを買うというよりは、「そんなに違和感なく履ける靴があれば購入する」という感じだ。

それとなく店先をうろうろしてみたが、店員さんはなかなか出てこない。商売気がないというよりは、押し売りをしないのだろう。以前、蒲田のOSCに出展したときに、「やる気のなさに驚いた」と掲示板に書かれたときのことを思い出した。

このお店では、オーダーメードの中敷を売っていて、それが約8000円と高価なのが、最初に気になった。店員さんにいろいろ質問をしていると、「ではちょっと座ってみてください」とコの字の奥にある椅子に座らせられ、靴と靴下を脱いで、足を調べてもらうことになった。詳しいことは覚えていないが、簡単に言うと身体の左右のバランスがとれていないという指摘を受け、また、靴が合っていないので、無理がかかっているとも言われた。言われた内容はいずれも思い当たるものだった。

いろいろ説明を聞きながら、靴屋さんでこんな説明を受けたことはないし、この人は信用できる、きっと良いお店だろうという気がしてきた。用事があったので、中敷の製作はお願いできなかったが、そのお店の靴を一足買ってみた。お店のチラシには、「靴選び 5つのポイント」というのが書かれていて、それはこんな内容だ。

  • 靴はまっすぐ作られているか
  • カウンターはしっかりしているか
  • シャンクはしっかりしているか
  • 指の付け根で曲がるか
  • 重い靴は軽く歩ける

それぞれに説明があるのだが、最後の項目については、「歩行は、蹴りだすことによって前に進むもので、蹴りだした足は振り子の作用で自然に前に出る。それがスムーズに進むためには、靴はある程度重くなければならない」というようなことが書いてある。今まで履いていた靴をお店の人に見せると、「これは柔らかすぎる」という。かかとの部分(カウンター、月形芯)が少し固くなっているだけで、あとは皮があるだけで、靴全体はとても軽い。購入した靴は、シャンクが通常の靴よりもかなり長く、しっかりとしている。また、見ただけではわからないが、足の裏の部分の補強芯(シャンク、踏まず鐵)は、鋼鉄製のしっかりしたものが入っている。そんなこんなで、とても重いのだが、実際に履いて歩いてみると、楽だし、歩きやすい。柔らかくて軽い靴が足に良いと思っていた間違いを悟った。

お店の名前は、パラマウント・ワーカーズ・コープといい、飯田橋と小杉にお店がある。多くのメーカが海外で大量生産を行う中、東京の工場で職人さんが手作りをしており、ソールの交換や修理も対応してくれるという。靴選びに苦労されている方にお勧めだ。自分も時間がとれたら、お店に行って、中敷を作ってもらおうと思っている。