making of 勉強会
プログラムができて、会場が手配できて、参加者も予想以上に集まったが、ひとつ足りないものがあった。自分の発表の準備だ。
30分というプロジェクト分の持ち時間の中で、自分が話をする20分強を使って何を話したら良いのか、ずっと考えていた。6月29日からPowerPointで作り始めた資料は、2003年から2009年までプロジェクトの主な取り組みについて、そのときどきに関わった人々と合わせて紹介するというものだった。勉強会の申し込み者リストを見ながら進行を考え、イベントの前日の7月2日には、ほぼドラフトと呼べるものができあがっていた。悪くはない。しかし、「本当に、これを明日話すのかな」と思い始めた。プロジェクトの取り組み(イベント)は、はてなキーワードに書かれていて、それは誰でも読める。そのサブセットを面白おかしく紹介することに意味があるのだろうか?もっと違う話をすべきではないだろうかと考えた。PowerPointを終了してMacBookを開き、Linux Foundation Japanの講演から一年ぶりにKeynoteを立ち上げた。Keynoteを選んだのは、凝ったエフェクトを作りたいからではなく(エフェクトに凝った資料を作るつもりはないし、時間もない)、気分転換だ。
既存のテンプレートからひとつを選び、メインライン化について、自分が伝えたい、伝えるべきと思った事柄を考えながら、ページを作り始めた。今回のイベントで自分が伝えたいテーマのひとつは「感謝」で、それを講演の中で形にできないかと思った。以前社内表彰案件で派遣の女性社員Sさんが表彰状を作っていたことを思い出して聞いてみたら、用紙があれば簡単にできると言う。お金を渡して会社の近くにあるビバホームに用紙を買ってきてもらっている間に、ネットで感謝状のテンプレートを探した。勉強会と懇親会それぞれの参加申し込みリストを見ながら感謝状を贈るべき相手を考え始めた。最初に書いたのは、メインライン化という目標を教えてくれた4人、CELFの上田さん、YLUGのよしおかさん、Usagiの吉藤さんとBlueQuartzの伊藤さんだ。一人一人に向けて自分の中にある感謝の気持ちを確認し、それを感謝状という限られた枠の中にまとめた。メインライン化を記念しての勉強会でこの4人の方々に感謝状を渡すことは特別な意味がある。感謝状を渡すとき、その背景を飾るものとしてスクリーンにLinux Foundation Japan #8 Symposiumの資料が映っていると良いと思い、去年の講演資料を探し顔写真が写っているページを引用した。こうして結局、7月2日は感謝状を用意するのに時間がかかり、資料は半分くらいしかできなかった。
7月3日、イベントの当日は午後どうしても抜けられない打ち合わせが入っていたため、午前中の限られた時間でしか作業が続けられなかった。打ち合わせが終わるとすぐに恵比寿に向かった。午後3時に会場の日本SGIホールに到着し、名古屋からこのイベントに参加するため駆けつけてくれた田中さんと田中さんを迎えに行った武田君と合流した。田中さんは、Ottawa Linux Symposium 2007で発表を行った際に、「自分は一緒に行けないが、できることで応援したい」と言って、フライヤーを描いていただいた方で、自分は今回が初対面となった。
勉強会は130名弱の申し込みがあったが、会場のホールは定員が85名とのことで、日本SGIの鴨志田さんと相談して、ホールの入り口と左右に椅子を配置することにした。これで120名収容できる。座席のセッティングができたところで、持参したSoftware Designの記事、「TOMOYO Linuxの歩き方(後編)」の「名前の由来」のページを座席に置いた。この記事には、名前の由来とCLAMP事務所に送ったメールの全文、それにREADME.ccsの半田さんによる原案が含まれている。
そうこうしているうちに勉強会の開催時間である午後4時が近づいてきた。MacBookをプロジェクタにつなぎ、画がでることを確認し、オーディオ入力のポートがあったので、自分のiTunesに入っているライブラリから曲を選び、BGMのようにして会場に流した。作業をしながら誰かが「マイケルジャクソンの曲が聴きたい」と言っていたのが聞こえたので、Off the Wallの曲をかけた。まだ、ピークを迎える前の、しかしとてつもない可能性を感じさせた頃のアルバムで、今聴くとその未完成さがせつない。そうこうしているうちにスタッフもそろい、開場となった。
まっちゃさんと小崎さんの講演の間に資料を仕上げようと思っていたが、MacBookを演題につないだまま勉強会が始まってしまったため、おとなしく二人の話を聞いていた(笑)。その後の休憩時間でざっと目を通したが、結局一度も通して内容を確認しておらず、自分でも次のページに何が入っているかわからないサプライズな資料となった。本番直前まで作業するのはいつものことだが、さすがにこんなことは初めてだ。そうして自分の発表となった。
上田さんと吉藤さんは勉強会にはきていなかったので、吉岡さんと伊藤さんに感謝状を渡した。それから、SourceForge.jpを運用されているOSDNの安井さん、そして、名古屋からきてくれている田中さんを紹介し、感謝状を渡した。安井さん、伊藤さんと田中さんについては、自分およびプロジェクトとしての感謝を伝えるというだけでなく、二人の貢献を会場にきてくれた方々に紹介したいという思いがあったので、その説明も添えた。田中さんへ感謝状を渡す際に、自分が前日書いた感謝状の言葉を読み上げながら、そこに込められた気持ちが高まり、声が少し詰まってしまった。予定外だが不可抗力で仕方がない。自分のメッセージが含まれたスライド、"Make the Change"のタイトルは、6月にこの世を去ったマイケル・ジャクソンのアルバム、Bad (Spec)に含まれている"Man in the mirror"からとったもので、マイケルへの追悼の想いも込めてその曲を流しながら紹介した。
懇親会では、代表取締役常務執行役員のYさんにも感謝状を贈った。正確には、「株式会社NTTデータ」殿の代表としてで、贈る自分も「オープンソースプロジェクトのマネージャ」としてだ。こちらはまったく平静に渡すことができた(笑)。勉強会には参加していなかった上田さんとUsagiの吉藤さん、小崎さん、根津さん、Software Designの連載をWiki化してくれたクスノさん、はじめてディストリビューションで採用してくれたターボリナックスの森蔭さん、メインライン化前にUbuntu用のパッケージを作っていただいたhitoさんに感謝状を渡した。デムパゆんゆんさん?とDebianのやまねさん、Gentooの青田さんには次回お会いしたときに渡すことになった。
勉強会と懇親会で、自分が伝えたかった気持ちはきっと感謝状とともに伝わっただろうと思う。参加していた人たちはその証人となった。会場にいた100名以上が確かに何を共有した。自分は主催でありスタッフであり、さらにはお祝いを受ける立場でもあったけれど、そうしたことに関係なく、今回の勉強会と懇親会は素晴らしいものだった。
勉強会と懇親会では、海外さんが用意してくれた色紙を回覧しお祝いの言葉をいただいた。その色紙は自分の会社の机に飾ってあるが、画像を読み込んでイベントのページなどに掲載する予定だ。