時計バンドの交換

注文していた腕時計のバンドが届いた。

僕が今している時計はCitizenのCLUB LAMERで、1986年の春に渋谷のさくらやで購入したものだ(初めて自分で購入した時計だからよく覚えている)。特にぞんざいに扱ったわけではないが、時計をいたわったり気にするような使い方もしていないから、もう外装は相当痛んでいる。数年前にオーバーホールをした際に外装を交換できないかメーカに尋ねてもらったがそのときはもう遅かった。

時計は、確か当時定価で3万円程度で、決して高級品ではないのだけれど、アメリカに滞在していたときを含めて何度かオーバーホールに出している。オーバーホールはだいたい一回1万円以上かかるから、皮バンドの交換を含めるともう時計本体を何回も買い換えられるくらいかかっている計算になる。最後にオーバーオールしたのは、横浜そごうにあるLoftの時計屋さんで、電池を交換してもらったら内部が汚れているようだと勧められた。そのときお店の方は「これは秒針をモーターで回すタイプで珍しいですね。大切にして下さいね」と言ってくれた(僕はそうしたことを言ってくれる店が好きだ)。この時計は秒針が20の倍数になったときに分針が動くようになっている。時刻を合わせるときは竜頭を操作すると時針と分針がモーターで移動する。お店の方はそのことを言われたものだ。

ある事情があって、昨年の4月22日から最近までは違う時計をしていた。Gucciの文字盤が黒く、金属ベルトのモデルだ。不思議なもので、Gucciの時計をしていた頃は自分がCitizenの腕時計を卒業したような気がしていた。Citizenを見るとどこか昔の自分を見ているようで、長らく机にしまいこんでいた。それが去年色々あって少しやせて、ベルトがゆるくなったのがきっかけでまたCitizenを使い出した(金属ベルトのコマは簡単には調節できない)。今はGucciの時計が机で待機している。僕はGucciの時計の持つ質感や雰囲気、しっかりとした箱や説明書のセンスも好きだけれど、今の自分にはなんとなくこの昔のCitizenが似合う気がしている。

時計の皮バンドは今まで黒のカーフばかりだったけれど、今回色々調べてワニ革の手作りのものを探してオーダーした。皮バンドはイタリア輸入の会社のものが有名なようだが、埼玉で一本ずつ手作りしているところに決めた。僕が注文したタイプのものは、一匹のワニから7本しか取れないこともそのとき初めて知った。Citizenの時計は、何故今までほうっておいたのかと文句は言わない。新しいバンドに「こんな高いバンド、自分には勿体ないっす」と言って恐縮しているように見える。僕はこの時計を買って間もない時期になんとなくなじめなくて軽く後悔したこともあった。文字盤を見ると時々その頃のことを思い出す。皮バンドを発送を連絡してくれたメールに、「大切に使います。このバンドが腕時計になじむようになるのが楽しみです」とリプライを返した。