洗濯機の修理

朝、豊洲駅で下車して会社に向かっていたら洗濯機の修理の担当の方から電話が入った。いろいろ話をしたら、「十中八九小銭が詰まっていると思います」と言う。午後5時くらいにきていただくことになった。

家に到着してからまずは症状を確認して、その後アースと電源コンセントを外してから、洗濯機をひっくり返した。狭いスペースなのに、手際が良い。洗濯機は小さなものではないし、あまり普通ひっくり返すことはない。逆さになった洗濯機を見るのはなんだかおかしなものだ。

洗濯機の底はそんなに複雑ではなくて、モーターや配水管があるだけだ。配水管の下の部分は透明なプラスチックで、中が透けて見えるのだが、ライトで照らしながら「あー、あった、あった」と言う。見ると確かにコインらしきものが詰まっている。500円玉だそうだ。

どうやったら500円玉がそんなところに詰まるのか、いろいろ質問をして教えてもらった。洗濯機のドラムの底にくるくる回るフィンがあるが、これはパルセータという。そのパルセータの外周の溝にコインが立った状態で挟まり、その状態でパルセータが回転すると、あら不思議500円玉は洗濯槽の下に吸い込まれていくらしい。その後500円玉は配水管に流れていくが、配水管は途中まで500円玉が通る太さだが、一番底の部分で細くなっている。500円玉はそこで詰まるようだ。もし配水管が細くなっていなかったら、500円玉はそのまま配水管を流れていって詰まることはないが、何故かそうはなっていないそうだ。

「で、どうやって取るんですか?」と聞くと、「2つの方法があるが、1つはあまりやりたくはないんです・・・」と気になることを言う。最初の方法は、配水管に指や道具を突っ込んで取り出すこと、「やりたくはない」というのは配水管のパーツを一度外して、500円玉を取り出してからまた接続(接着剤を使う)するというものだそうだ。外すこと自体や戻すことは問題ないが、ちょっとした作業になるし、接着が固まるで丸一日使えないからやりたくないということのようだ。今回の場合も最初はまず前者で挑戦することになった。「これまで取り出せなかったことは一度もない」というのは頼もしいのだが、「なかなかうまくいかなくて難しいんですどの修理屋さんも苦労しています」と説明があった。

この作業は配水管の横のオーバーフロー用のパイプを外してそこから指を突っ込んで行う。何が難しいと言って、すごく狭くて、細くて、曲がりくねっている。指を入れると先がコインにふれるが、ひっぱり出すことはできない。すぐ目の前に500円玉が見えているのに取り出せない。セロがいれば・・・。作業はえらく原始的だ。洗濯機を横倒しにして、底の部分から「どん」と押して、その勢いでコインを押し出す作戦だ。洗濯機全体を「どん」と押すのはかなり力が必要だ。500円玉はなかなか思うように動いてくれない。作業があまりうまく行かないので、「これでどうですか?」とガムテープをくるくる巻いたものを渡した。粘着作戦だ。「う〜ん、どうでしょう?」と言いながらも試してくれたが、ガムテープを巻いたものは500円玉にはくっつかず、配水管の奥の方の壁にくっついて、ガムテープ自体がとれなくなった。よけいなことを提案して、作業をさらに大変にしてしまった(後悔)。

いろいろな道具を使いなんとかガムテープを取り出してから、再び原始的な「どん」を繰り返し、「これはもう配水管を外すしかないかな」的機運が高まった頃、ひょいと500円玉が押し出された。すぐ横で固唾をのんで見ていた自分は、思わず拍手をしてしまったが、客観的に見るとおかしな光景だ。渡してもらったものを見ると確かに500円玉だ。「こういうコインが吸い込まれないようにできないんですか?」と質問したら、「無理でしょう。洗うときに気をつけて下さいと言うようにしています」という返事だった。掃除機には掃除機の都合があるのだ。

修理だが、例によってきてもらった瞬間に出張料2,100円がかかっていて、あとは技術料だ。技術料は排水なんとかというパーツの交換と同程度で少しおまけしてもらって、5,300円だった。消費税を含めて7,770円也だが、500円見つかったから7,270円だ。作業していただいた方はすっかり汗だくだったので、洗濯機からでてきた500円玉でコークとお茶のミニボトルを買って渡した。電化製品が壊れたり、修理費がかかるのは勿論うれしくないのだが、修理の作業を見たり、修理の人と話をするのはとても楽しい、なんて書くとまた何か壊れちゃうからやめておこう(笑)。